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SPTで歯周病をぶり返さない!“治療後”から始める歯ぐきケア

 

治療して終わりじゃない!
「SPT」で歯周病をぶり返さない歯ぐきへ

「治療が終わったから、もう大丈夫」

実は、歯周病に関してはそう言い切れないのが現実です。

歯ぐきの腫れや出血がおさまり、「ひとまず安心」と感じるタイミングこそ、本当は“これからどう守っていくか”が大切なステージ。そこで重要になるのが、SPT(歯周病安定期治療)という“予防の一歩先”のケアです。治療後の良い状態をキープし、将来も自分の歯でおいしく食事を楽しむために。

定期的なチェックとプロによるクリーニングで、歯ぐきと歯を長く守っていくSPTについて、わかりやすくご紹介します。

 

データで見る「歯周病」と歯の喪失
SPT(歯周病安定期治療)とは?
なぜSPTが必要なのか
SPTで行う主な治療内容
SPTと「定期検診(メンテナンス)」の違い 
通院間隔の目安
SPTを続けることで期待できること
まとめ
よくある質問(FAQ)

データで見る「歯周病」と歯の喪失

日本の調査では、歯を失う二大原因はむし歯と歯周病とされています。8020推進財団が行った「第2回 永久歯の抜歯原因調査」では、永久歯を抜く主な理由の**第1位は歯周病(37.1%)、第2位がむし歯(29.2%)**という結果が報告されています。また、厚生労働省 e-ヘルスネットのまとめでは、45歳以上では歯周ポケットを持つ人が過半数を占め、全年齢の約4割に歯肉出血がみられることが示されています。こうしたデータからも、歯周病は「気づかないうちに進行し、歯を失う大きな要因になりやすい病気」であり、治療後も安定した状態を維持するためのSPT(歯周病安定期治療)が重要であることがわかります。

参照元:厚生労働省

参照元:公益財団法人 8020推進財団

 

SPT(歯周病安定期治療)とは?

SPT(エス・ピー・ティー)は「サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー」の略で、歯周病の治療によって歯ぐきの炎症や歯周ポケットの深さが落ち着いたあと、その良い状態をできるだけ長く保つために行う“歯周病の安定期治療”です。歯周病は、治療が終われば完全になくなるというよりも、「良い状態を維持し続けること」が大切な病気です。そのため、基本治療や歯周外科治療が一段落したあとも、定期的に専門的なケアとチェックを行う段階としてSPTが位置づけられています。

なぜSPTが必要か

歯周病は、一度良くなっても、プラーク(歯垢)がたまりやすくなったり、生活習慣が乱れたりすると再び進行しやすい特徴があります。また、歯周ポケットの奥深くや、歯と歯ぐきの境目など、ご自宅での歯みがきだけではケアしきれない細かい部分が多くあります。こうした「歯ブラシが届きにくい場所」を定期的に歯科医院でクリーニングし、炎症のサインがないか確認していくのがSPTの役割です。SPTを継続して受けることで、歯周病の悪化や再発のリスクを減らし、ご自身の歯を長く使える可能性が高まることが、国内外の研究からも示されています。

SPTで大切な3つのポイント

歯周病の再発や悪化を防ぐために、SPTでは次のようなポイントを押さえながら、お口の状態を長期的に管理していきます。

ポイント内容
定期的に歯ぐきの状態をチェックする歯周ポケットの深さや出血の有無、歯の動きなどを定期的に確認し、歯周病が落ち着いているか、悪化していないかを細かく診査します。
自分では取り切れない汚れを専門的にクリーニングする毎日の歯みがきでは届きにくい歯周ポケット内や歯と歯の間、かぶせ物の周辺などに付着したプラークや歯石を、専用の器具で丁寧に取り除きます。
そのときの状態に合わせて、ケア方法や生活習慣を見直す磨き残しが多い部分や炎症が出やすい部位を一緒に確認しながら、歯みがきの当て方・清掃用具の選び方、生活習慣の改善点などをわかりやすくアドバイスします。

といったサイクルを回し続けることが、歯周病を長期的にコントロールしていく鍵になります。SPTは、このサイクルを歯医者さんと一緒に続けていくための治療段階です。

 

SPTで行う主な内容

SPTでは、アクティブな歯周病治療が終了したあと、一人ひとりのリスクやお口の状態に合わせて、次のようなケアを組み合わせて行います。まず、歯周ポケットの深さや出血の有無、歯の動き、プラークの付着状況などをチェックし、現在の歯周病のコントロール状況を確認します。必要に応じて、レントゲン写真で歯槽骨の状態を評価することもあります。

SPTで行う主なケア内容

SPTでは、お口の状態に合わせて次のような専門的ケアを組み合わせて行い、歯周病の安定を目指します。

ケア内容説明
歯ぐきの縁やポケット内に残っているプラーク・歯石の除去歯ぐきのきわや歯周ポケット内に付着したプラークや歯石を、専用の器具を用いて丁寧に取り除き、炎症の原因となる汚れを減らします。
歯の表面のクリーニングや研磨(バイオフィルムの除去)歯の表面にこびりついた細菌の膜(バイオフィルム)を除去し、つるつるとした状態に整えることで、新たな汚れがつきにくい環境づくりを行います。
歯ブラシの当て方、デンタルフロスや歯間ブラシの使い方の確認普段のブラッシング方法を確認しながら、歯ブラシの動かし方や、デンタルフロス・歯間ブラシの選び方・使い方を一人ひとりのお口に合わせてお伝えします。
磨き残しが出やすい部位のアドバイス実際の磨き残しの状態を確認し、「汚れが残りやすい場所」や「気をつけたいポイント」をお示ししながら、日々のケアで意識していただきたい点をアドバイスします。
必要に応じた噛み合わせやかぶせ物のチェック噛み合わせの状態や、詰め物・被せ物の段差・形態などを確認し、歯周病の悪化につながりやすい部分がないかをチェックしたうえで、必要に応じて調整や治療をご提案します。

SPTと「定期検診(メンテナンス)」の違い

患者さんからよくいただくご質問のひとつが、「SPTと定期検診(メンテナンス)は何が違うのですか?」というものです。どちらも「定期的に通って診てもらう」という点では共通していますが、大きな違いは「対象となるお口の状態」と「位置づけ」です。

SPT

歯周病治療後、「完全治癒」ではなく「病状が安定している」状態の方を対象とした“治療”の一部。再発・進行を防ぐための安定期治療です。

メンテナンス(定期検診)

歯周病が治癒している、あるいは健康なお口の状態を長く保つための“健康管理”としての定期ケアです。

日本歯周病学会の資料でも、SPTは病状安定期の歯周病患者さんを対象とした治療として、メンテナンスとは区別して扱うことが推奨されています。

参照元:日本歯周病学会 歯周病治療のガイドライン2022

通院回感覚の目安

SPTの通院間隔は、患者さんごとに異なりますが、目安としては3か月ごとの受診からスタートするケースが一般的です。歯ぐきの状態が安定しており、セルフケアも良好な場合には、少しずつ間隔を延ばして4〜6か月ごとの来院に調整していくこともあります。国内のガイドラインや専門家向け資料でも、病状安定期にはおおむね3〜6か月の範囲で、リスクに応じてSPT・メインテナンスの間隔を設定することが推奨されています。

 

SPTで期待できること

SPTやメインテナンスを長期的に続けることで、歯の残り方が変わってくることが、国内外の研究から報告されています。たとえば、スウェーデンで30年間にわたりメインテナンスを受け続けた成人を追跡した研究では、30年間で失った歯の本数は平均0.4〜1.8本とごく少数にとどまり、歯周病やむし歯が原因で抜歯となった歯は限られていたことが示されています。また、日本の一般歯科医院で20年以上メインテナンスに通っていた患者さんを調査した研究では、定期的な受診をきちんと続けていた人ほど、歯を失う本数が少なかったと報告されています(メインテナンスの受診率が低い群では、歯を失うリスクが高かったとされています)。もちろん、すべての方に同じ結果が得られるわけではありませんが、「治療して終わり」ではなく「治療後も一緒に管理を続ける」ことで、長い目で見たときの歯の残り方に大きな違いが生まれる可能性がある、ということは共通して示されています。

 

まとめ

歯周病は、「治療が終わったらおしまい」という病気ではなく、治療後も上手に付き合いながら、良い状態を保っていくことが大切です。SPT(歯周病安定期治療)は、そのための“治療後の大事なステップ”であり、再発や悪化を防ぎながら、歯ぐきと歯を長く守ることを目的としたケアです。定期的なチェックと歯科医院でのクリーニングを続けることで、毎日のセルフケアだけでは届きにくい部分の汚れもコントロールしやすくなります。また、そのときどきのお口の状態に合わせてケア方法を見直すことで、将来の歯の残り方にも良い影響が期待できます。「今の状態をしっかり維持したい」「将来のために何をしておけばよいか知りたい」という方は、一度SPTについてご相談ください。お一人おひとりのお口の状態や生活習慣に合わせて、無理なく続けやすい通院ペースとケア方法をご提案いたします。

当院の歯周病治療について

Q. 歯科のSPTとSRPの違いは何ですか?

A.SRP(スケーリング・ルートプレーニング)は、歯周病の「初期〜進行期」に行う基本的な治療です。歯ぐきの中まで付着したプラークや歯石を取り除き(スケーリング)、歯の根の表面をなめらかに整える(ルートプレーニング)ことで、炎症をおさえることを目的としています。

Q. SPTとリコールの違いは何ですか?

A.リコールは「定期検診やクリーニングのご案内・お知らせ」といった意味合いで使われる言葉で、通院のきっかけや仕組みを指すことが多い用語です。一方SPTは、歯周病治療後の「病状安定期」に行う具体的な治療内容・ステージの名称です。つまり、リコールでご案内している内容が、患者さんの状態によって「SPTの場合もあれば、メインテナンスの場合もある」というイメージです。

Q. SPTクリーニングとは何ですか?

A.SPTクリーニングとは、SPT(歯周病安定期治療)の中で行う専門的なクリーニングを指します。単なる着色落としや見た目のクリーニングではなく、歯周ポケットの中やかぶせ物の周りなど、歯周病の原因になりやすい部分のプラークや歯石、バイオフィルムを専用の器具で丁寧に取り除き、歯ぐきの炎症を起こしにくい環境を整えることを目的としています。

この記事の監修者

医療法人和合会いまだ歯科医院 理事長 今田 奨

当院では初診のカウンセリングを大切にしています。患者さまが治療に対して不安を抱えている場合は、しっかりとお話を伺い、安心して治療に臨んでいただけるようサポートしています。お困りの方はお気軽にご相談ください。

【経歴】
平成9年3月 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
第90回歯科医師国家試験合格
5月 愛知学院大学歯学部附属病院臨床研修医
愛知学院大学歯学部歯科保存学第三講座(現在歯周病科)専攻生
平成10年4月 愛知学院大学歯学部歯科保存学第三講座非常勤助手
平成27年10月 愛知学院大学助教

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いまだ歯科医院

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