[予防歯科]ブラキシズム とは

ブラキシズムやTCHといった言葉をお聞きになったことはありますか?

 口腔で起こる2大疾患のむし歯や歯周病以外に口腔の健康を害したりむし歯や歯周病といった“病”を進行させたり悪化させたりする状態になっている人が増えてきています。また、そういった状態を放置していると頭痛や肩こりなど身体に現れる不快症状の原因になることもあります。

その状態のことを「ブラキシズム(咬合生外傷)」と呼びます。
ブラキシズム

 最近はこの「ブラキシズム」について、臨床の現場でも説明することが増えてきました。悩みに対して口の中を確認をさせていただいた時にこの「ブラキシズム」についての説明が必要な患者さんが多くなってきているように感じます。一日のうちで「ブラキシズム」に関して患者さんと情報を共有しない日はありません。また、僕自身もその中のひとりです。ブラキシズムがあると口腔内では一体どのようなことが起こっているのでしょうか?またそれに対してどのように対策を考えれば善いのでしょうか?

ブラキシズムを管理

原因     「因」 ストレス(中枢性、末梢性)
結果     「果」 咬合性外傷
修飾因子   「縁」 環境 残存歯数 残存しの状態
                        TCH(Tooth Contacting Habit)=上下の歯を接触させる癖

ブラキシズムとは

ブラキシズム

「ブラキシズム」はむし歯や歯周病といった原因菌がある感染症ではありません。

ブラキシズ肩こり米国口腔顔面痛学会によると、ブラキシズムは「昼間あるいは夜間に行われる緊張、噛みしめ、歯ぎしり、および臼磨運動などの異常機能運動」と定義づけられています。

しかし、不確定な部分も多く、団体によって定義も多少異なっているようです。咀嚼筋群の過剰緊張を主徴とする一連の非機能的歯のこすり合わせや歯牙どうしの接触が本体です。正常な咀嚼や嚥下に比べて、上下の歯の間に食物という緩衛物なしに歯に強い持続圧が加わることとブラキシズムを自覚している人が少なく生理的に対処できる範囲をこえて退行性の変化してきてさらに口腔周囲組織に損傷が現れてきても初期段階では自覚症状があらわれなかったりまた、症状が現れてきていても原因がブラキシズムと結びつかないことも特長です。

ブラキシズムは咀嚼筋群の過剰緊張を主徴とする一連の非機能的歯のこすり合わせや歯牙どうしの接触が本体であるため、ブラキシズムは「疾患」としてよりも「状態」としてとらえることが大切です。

口腔といわれる臓器の健康を考えるとき「ブラキシズム」は

①生理的な範囲として考えてよいもの
②生理的な範囲を超えるもの
(悪影響を及ぼし口腔内外周囲の健康を害してしまう状態)

にわけて“対処管理”するのか“治療が必要”なのかを判断していくことが大切です。

そして、患者さん自身がブラキシズムを自覚している場合もあれば、自覚がない場合もあります。どちらかというと自覚の少ない患者さんの方が多いようです。

しかし、ブラキシズムは患者さんの自覚の有無にかかわらず口腔には負荷がかかるため口腔内にはブラキシズムによる変化が現れます。

ブラキシズムによる変化
 食事等で顎を使っていないとき人間の上下の歯は接触していません。口を閉じた時、上下の歯が触れていない状態が顎のリラックスした状態です。つまり顎をリラックスさせると上下の歯の間に1〜3mmの隙間が出来るため歯同士が接触することはありません。この状態のことを専門的には下顎安静位と呼んでいます。本来上下の歯は会話、食物の咀嚼、食物の嚥下という動作をするときに瞬間的に触るだけです。そのため一日24時間のうち歯の接触時間は20分くらいしかありません。

【日常生活の中でブラキシズムが現れやすいタイミング】


 img12 ところが、パソコンやスマホなどを使っているとき、料理や家事をしているとき、長距離の車の運転をしているとき、考え事をしているとき、テレビを見ているときなど何かに長時間集中して体がストレスを感じているときなどに上下の歯を食いしばったり上下の歯が触れた状態になる人が多いようです。

また、就寝時に現れることもあります。たとえ強くかんでいなくとも、上下を軽く接触させただけで口を閉じる筋肉は働いてしまいます。上下の歯が触れている間、筋肉は働き続けてしまいます。接触時間が長時間になれば筋肉は疲労してきます。また口を閉じる筋肉が働くと、顎関節は押えつけられることになるため、長時間になると関節への血の巡りが悪くなり、丁度正座していて足がしびれたときと同じように、感覚が敏感になって痛みを感じやすくなってしまいます。

そのため歯そのものや骨など歯を支えている部分へ過負荷、口腔周囲の筋肉等への疲労を放置していると各部位でストレスがたまり口腔の健康を害してしまう結果をまねいてしまいます。

口腔や身体からの合図

歯それでは、上下の歯を接触させる癖やブラキシズムの有無をどのように認識していけばよいのでしょうか?

①歯牙に現れる合図
②歯を支えている部位に現れる合図
③ 口腔周囲に現れる合図

に分けて列記してみると、下記のようにたくさん生体からの合図があります。日々のあなたの置かれている環境や状況、猛暑日や極寒日など気象によって変化していきます。変化を見つけて観察して対処管理していくことが大切です。

【著しい咬耗状態】・咬合痛(噛んだ時に生じる疼痛)がある
・異常咬耗 ・歯牙の破折 ・強い咬耗がみられる
・ファセット(歯の咬合面の咬耗)がみられる
・修復物の表面性状の変化
・エナメル質に亀裂(クラック)やチッピングがおきている
・アブフラクション(楔状欠損)がみられる
・歯冠ハセツを起こしている
・歯根ハセツを起こしている
・過蓋咬合が進行している ・知覚過敏など

【歯の異常移動(フレミタス)】 

・歯周病の進行重症化 ・歯の動揺度の増加
・フレミタス(歯が触れ合った時の歯の動揺)の出現
・自発痛、咬合痛、打診痛 ・骨隆起
・歯の移動、フレアアウト(歯が移動して広がっていく状態)の出現
・歯肉退宿が進行している(クレフト、フェストゥーン)
・歯肉の肥厚、歯の圧下がみられる
・骨隆起がみられる
・セメント質剥離を起こしている
・インプラント周囲の骨が歯槽硬線様に変化している
・歯根膜腔の拡大がみられる

  【頬粘膜についた歯の跡】・エックス線所見   
・歯根膜腔の拡大   
・歯槽硬線の消失あるいは肥厚
・垂直性骨吸収
・特徴的な骨吸収像がみられる
・骨梁の緻密化あるいは鬆粗化など
・骨の不透過性が亢進し、緻密化している
・ポンティック下の骨に膨隆がみられる
など

・顎関節の機能障害 ・開口障害
・頭痛 ・頬粘膜や舌に圧痕がみられる
・下顎角が発達し、顎関節の下顎頭が大きい
・顔貌や歯列にゆがみがみられる
・口腔周囲の筋に緊張がみられる
・力の関与が疑われるさまざまな症状を訴える
・頬のこわばり ・肩こりや咬筋のこり
・咬合痛(歯牙歯周組織以外に痛みを生じる) など

ブラキシズムの有無

歯こういった合図を見つけたとき不安になったり慌てる必要はありません。上下の歯を接触させる癖やブラキシズムからの合図なのかを判断せず、何をしていたときに現れているのかを考えてみてください。まず行うことは顎のリラックスした状態を意識することです。自覚する症状等が現れてくる前に私たちに相談をしてみてください。どのような状態にあるのかまた、どのように対処していくことが大切なのかを一緒に考えていきましょう。

ブラキシズムの有無とご自分がどのような状態であるのかを正しく認識したうえで歯牙や歯周組織、その他口腔周囲にどのような影響がでてくるのかをしっかり把握し対処を考えていくことが大切です。

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